はじめに
かつて看護師として働いていた頃、私は心も体も限界まで追い詰められていました。「看護師」という仕事への憧れと責任感に突き動かされていた一方で、仕事に適応できない自分を責め続ける日々。そんな私が病気を経験し、職場を離れることでようやく見えた「新しい道」についてお話しします。同じような境遇にある方への励ましになれば幸いです。
目次
- 看護師時代に直面した厳しい現実
- バセドウ病と適応障害がもたらした転機
- 辞めることで得た解放感と新しい発見
- 家族や周囲の支えが私を救った
- 自分に合った道を見つけるために
1. 看護師時代に直面した厳しい現実
看護学生時代に感じた「医療の厳しさ」
看護学生時代、私は全ての病棟を回る実習に参加していました。実習指導の先生も病棟の看護師も厳しく、頻繁に「その看護のエビデンスは?」と鋭く問われ、答えられなければ叱責される日々でした。実習仲間と一緒に震えながら過ごしたあの時間は、私の中で看護の厳しさを痛感させるものでした。
中でも精神科の実習は特に辛く、患者さんに寄り添おうとすればするほど、自分の心も引き込まれる感覚に陥りました。「精神科は自分には無理だ」と思い、実家に逃げ帰った日もあったほどです。
看護師としての「理想と現実の狭間」
晴れて看護師になったものの、現場では日々自分の力不足を思い知らされました。特に、昼夜問わない勤務や厳しい指導の中で、「私は役に立たない人間だ」という思いが頭を離れませんでした。患者さんの命を預かる仕事のプレッシャーに耐えきれず、自己否定ばかりが募っていきました。
2. バセドウ病と適応障害がもたらした転機
ある日突然の体調不良
看護師3年目。夜勤明けのある日、心拍数が200を超え、手の震えで注射器を扱えなくなるという事態に見舞われました。その後、病院で診断されたのは「バセドウ病」。当時の私を支配していた高揚感や過剰な発汗、食べても痩せる体質など、全てがこの病気によるものでした。
治療の中で感じた「自分の無力さ」
治療を始めると、ホルモンの乱高下により、今まで高揚していた気分が一気に落ち込みました。「自分ってこんなに暗かったっけ?」と戸惑いながらも、体調の悪化により絶対安静を余儀なくされました。仕事を休むことで職場に迷惑をかけているという罪悪感も加わり、心の中で自分を責め続けていました。
精神科との再会—適応障害の診断
職場の師長の勧めで精神科を受診すると、「適応障害」と診断されました。バセドウ病の影響で精神的に不安定になっていたのです。「まさか自分が精神的な病気になるなんて」とショックを受けると同時に、医療現場の厳しさがここまで私を追い詰めていたことを実感しました。
3. 辞めることで得た解放感と新しい発見
師長の言葉がもたらした救い
「Tamakoさんは優しいね。職場を辞めたら迷惑がかかると思ってるんだね。でも今のままだと患者さんにも真剣に向き合えないと思ってるんだね。それが本当の気持ちだよ。」当時の師長のこの言葉は、私の心を大きく軽くしてくれました。
看護師を辞めることへの葛藤
職場を辞めることは、「自分は逃げたのではないか」「医療に携わる親族に顔向けできない」という罪悪感を伴いました。しかし、辞めることで初めて、「医療だけが人生ではない」という事実に気づくことができました。
自由な世界を知る喜び
時間やルールに縛られた看護師生活から解放されると、心の余裕が戻ってきました。看護師時代には考えもしなかった「自分のための時間」を持てるようになったことで、人生に新たな喜びを見出しました。
4. 家族や周囲の支えが私を救った
家族とパートナーの大きな存在
私がどん底にいた時、支えてくれたのは家族や当時の彼氏(現在の夫)でした。一人では乗り越えられなかった苦しみも、彼らの存在があったからこそ少しずつ光を見つけられるようになったのです。
自分を理解してくれる仲間との出会い
医療業界を離れた後、同じようにキャリアチェンジを経験した仲間たちとの交流が、私に新しい視点を与えてくれました。「失敗しても、またやり直せばいい」という思いを持てるようになりました。
5. 自分に合った道を見つけるために
医療以外の新しい可能性
医療以外の道を模索しながら、自分のできる範囲で社会と関わり続けることに喜びを感じました。訪問看護や医療事務の仕事は、私にとって無理なく人の役に立てる場でした。
多様な生き方を知る大切さ
「医療が全てではない」と気づいたことで、柔軟な思考を持てるようになりました。これからも自分に合った生き方を探し続けるつもりです。
まとめ:道は一つではない
看護師を辞めたことで得た教訓は、「人生に一つの道しかないと思い込まないこと」。困難の中で見つけた希望と、支えてくれる人たちの大切さを胸に、私はこれからも新しい道を歩んでいきます。同じ悩みを抱える方が、この記事から少しでも前向きな気持ちを持てたら嬉しいです。